高麗人参についての基礎知識

高麗人参の栽培方法

高麗人参といえば、広く愛されている漢方の一つです。
そんな高麗人参はどうやって栽培されているのでしょうか?

高麗人参の特徴

栽培方法を見る前に、高麗人参の特徴を軽くご紹介しましょう。

まず、高麗人参の特徴としてはその豊富な栄養素です。
ジンセノサイドやサポニンなどを含み、実に豊かな効能を持ちます。

しかし、高麗人参は数ヶ月やそこらでは成長しきらない植物です。
最低でも1年かかり、商品として出回っているものでは大体6年をかけたものが多く、気の長い植物といえます。

更に、最大の特徴として植わった土の中の栄養分を全て吸い取ってしまうという特徴があります。
そのためか、自生している高麗人参は山奥の深くの一部にしかないのです。
また、一度高麗人参が育った土では10年から15年は他の植物が育たなくなるとまでいわれています。

では、このような高麗人参を栽培しようとした時、実際に取られている方法とはどんなものかをご紹介しましょう。

高麗人参の栽培の基本

まず、高麗人参を栽培する際の基本となるポイントが二点あります。

一つは、水はけのよいこと。
一つは、暑すぎず寒すぎない場所であること。

水はけのよい土が必要だということは、どんな農作物でも変わらず共通の事項です。水が留まりすぎてしまえば根腐れが起きてしまいますし、その逆に水が全く留まらない土であれば乾燥しすぎてしまいます。

暑すぎず寒すぎない場所が必要というのは、高麗人参は非常に繊細な植物であるため、少しでも本来植わっていた場所と気温が異なると発芽しません。

冷たく湿度のある気温を好むようですが、本来人も立ち入らない山奥で育っていたと考えると納得かもしれませんね。

そして、何よりも大事なのは土作りです。

一般的に野菜を育てようと思ったら、土を耕したり石を取り除いたりといったイメージがあるでしょう。
それだけでなく、土にやる肥料や畝の幅などにも気を遣う必要があるといいます。

前提として、高麗人参を植える場所は標高200mから1000mほどの辺りが良いということです。元々山奥に自生していた植物ですし、やはり環境も本来の生態に揃えてやる必要があるのですね。

国内では福島や長野などで栽培されているようですが、島根県の海沿いなどでも栽培は成功しているようなので、上手くやることができれば高麗人参本来の生息環境と異なる環境でも育ってくれるようです。

土の性質としては砂質から埴質と呼ばれる多少粘土の混じった土質が良いと言われています。砂質であれば少し砂が多めの土質で水はけの良さが利点であり、埴質であれば粘土質の多めな土質で水持ちの良さが特徴です。

また、土中のPHは4.5~6が理想とされています。大体弱酸性くらいがちょうどいいということですね。

土質のPHの調整方法としては、酸度を調整していないピートモスを撒くなどの対処法がありますが、基本的に日本はよく雨が降るため自然にはアルカリ性の土壌というのはあまりないそうです。

肥料は堆肥やミネラルに富む肥料である実が出来る前の未熟なトウモロコシなどを数回にわたって入れ、土壌の殺菌と肥料を混ぜ込むことを繰り返します。長野県の例では、骨粉や鶏糞などを調整しながら混ぜ込んでいるようです。

ただし、肥料を多くやりすぎたりすると後々高麗人参が病気になるリスクが高まってしまいます。特に窒素を多く含んでしまうことになると発育障害が起きやすくあるため、注意が必要になります。

また、化学肥料は避けるべきとされています。化学肥料に含まれている塩分が、高麗人参の栄養吸収を阻害すると見られており、発育不良を引き起こすからです。この現象を濃度障害と呼んでいます。

場所や土地柄によっては更に日除けや雪よけのためのブルーシートを張ったり、雪の多い地域なら専用の小屋を建ててやることすらあります。

ここまで準備して土が出来た頃、晩秋の頃にようやく種まきが可能となるのです。

種を撒いたら苗床をわらで覆うなどして寒さや風対策を施し、冬を越え、ようやく春に発芽します。

ちなみに、高麗人参は10年まで育つようですが、6年を過ぎると病害虫に侵される危険が増し、また高麗人参が含む栄養素も徐々に減少していってしまうということのため、一般的には6年目が限度となります。

栽培方法としては何がある?

高麗人参の栽培方法には、連作・輪作・ジプシー農法・オーガニック農法とあります。
それぞれ見ていきましょう。

連作

連作とは、同じ土地に同じ作物を続けて作る農法をいいます。
一般的にはトマトやナス、じゃがいもといった野菜が連作されることもあります。

同じ土地で育てることが出来るため、場所を新たに取る必要がないのがメリットと言えますが、これには深刻なデメリットが存在します。
それが連作障害です。

連作障害とは、同じ土地で同じ作物を作り続けた結果として、土中の栄養素が貧相になってしまっていることで発育不良を引き起こしたり、野菜の天敵である病原菌や有害な虫がより多く発生しやすくなってしまうことをいいます。

そのため、一般的に連作を行う場合は連続で同じ作物を植え続けるのではなく、ある程度の休養期間を設けたり、別の作物を植えたりするなどの対策を取っています。

では、高麗人参の場合はどうなのでしょうか。

高麗人参は普通に育てるだけでは連作はとうてい無理です。基本的に連続で作る場合は他の新しい土地で作るか、もしくは土作りから再スタートさせて行うものとされています。

しかし、連作障害に挑んだ方もおられます。結果として10年近く同じ畑で高麗人参を連作し続けているとのことです。

その方によると、高麗人参の連作障害は発芽後の成長に必要な養分の不足問題と、その後の成長していく環境の阻害原因を取り除く問題があるとのことです。

輪作

輪作とは、同じ場所で育てる作物を毎年変えていくことをいいます。
作る野菜をローテーションしていくことから輪作と呼ばれています。

主に連作障害を避けるために行うことと、野菜の生育をより促すために行う方法とされています。

高麗人参を育てる場合、輪作は不可能に思えます。
しかし、高麗人参と相性がいい植物もあります。それは稲です。

稲は連作障害を起こさない作物だと言われています。よく同じ水田に毎年稲穂が実る光景を見たことがあるという方もいるのではないでしょうか?

なぜ稲が連作障害を起こさず、高麗人参との輪作に向いているのか。それは稲の生育方法に関わりがあります。

稲は田んぼに水を張る必要があり、その水は河川や用水から得ています。その際に水中に溶けている養分を利用できるため、土の中になくとも水から持ってくることが出来るのです。

更に水を流すことで過剰な成分や有害物質も流すことができ、空気も追い出せるため微生物や病原菌も死滅させられます。

高麗人参にとっては正に良いことづくめ。稲はベストパートナーといえるでしょう。

ジプシー農法

ジプシー農法とは、次々に土地を変えて作物を植えていく農法です。

高麗人参の性質を考えると理にかなった農法といえるかもしれません。

もちろん、使い潰すのではなく他の土地で高麗人参を育てている間は、それまで育てていた土を再度改良することからスタートさせていきます。

オーガニック農法

オーガニック農法とは土作りの段階などで、化学肥料でなく有機肥料や堆肥などを与えて土中の養分を十分にしてやる農法です。

高麗人参にやる肥料は化学肥料では発育不良を引き起こすため、高麗人参を育てる場合は自然とこの農法になるようなものです。

ただし、与えるものもただの堆肥ではなく、より厳選した肥料を与える必要があります。


高麗人参を育てるのには、並々ならぬ努力が必要だということですね。

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